引き裂かれた絆 第5話


「…あったかい…」

拘束されたままのゴウを、レツが力強く抱き締める。

「…レ…ツ…」

両腕を頭上へ、そして両足を肩幅程度に広げられて鎖でつながれているゴウが声をあげる。

「どうしたの、兄さん?」

今、ゴウとレツはお互いにビースト・オンをし、ゴウはゲキバイオレットに、レツはゲキブルーのスーツに身を包んでいる。
お互いがお互いに体にピッタリ吸い付いているような、光沢のあるスーツを身に纏い、お互いのマスクを近付け合っている。
周りから見れば異様な光景と言えよう。
だが、今の2人にはそんなことは全く関係のないように思われた。
それもそのはず。
レツはレツであって、レツではないのだから。

「…レ…ツ…」

ゴウもそれは分かっていたはずである。
この、自身の目の前にいるレツは偽者のはずだった。
だが、レツがビースト・オンしたことによって、ゲキブルーとなり、その上、レツの妖しい瞳にゴウは思考能力を完全に奪われていた。

「どうしたんだよぉ、兄さん?」

「…」

ゴウはじっとレツを見つめているだけだった。

「…もしかして、気持ち良くなりたい?」

その時だった。
ゴウの体が一瞬揺れたかと思うと、

「…ああ…」

と大きく頭を垂れたのである。

「…うん!」

レツの顔がゴウの顔に更に近付く。

「たぁっぷり気持ち良くなろうよ!」

そう言った時だった。

ゴツン…

お互いのマスクがぶつかり、その口元部分がくっ付いていた。

「…おお…」

ゴウの視界に入らないところに移動していたロンがその光景を見て、思わず舌なめずりをした。

「何とエロティックな、何といやらしい…。やはり人間は愚かな生き物よ。己の欲には勝てない…。そんなヤツらがこの私を封印しようとは…!」

ロンは怒りで拳をブルブルと震わせる。

「…ゴウよ、お前には完全なる私の操り人形となってもらいます!」

その瞬間、ロンの右拳が金色に輝いたかと思うと、照準をゴウに合わせ、何かを弾き飛ばした。

バシィッ!!

光弾がゴウの頭にぶつかり、ゴウがその衝撃で仰け反った。

「…!」

レツ、いや、ロンが作り出した幻のレツが驚いて後ろを振り返る。

「さあ、レツ!ゴウをお前の手で堕としてやるのです!ゴウから正義の心を消し去ってやるのです!」

「…かしこまりました、ロン様!」

するとレツのマスクが光り、次の瞬間、レツの素顔が現れた。

「フフッ!兄さん。兄さんもマスクを取っちゃいなよ」

レツがそう言った時だった。
それまで仰け反っていたゴウがゆっくりと起き上がり、レツを見つめた。
そして次の瞬間、ゴウのマスクも光り、ゴウの素顔が同じように現れた。

「…レツ…」

今までのゴウではなかった。
目は虚ろで、どことなくぼんやりとしている。

「兄さん、窮屈だろうけど、もう少し縛られたままでいてね」

レツはそう言うと、ゴウの唇にそっと口付けた。

「…」

ゴウがぼんやりとレツを見つめる。

「きっと最高の夢を見せてあげるから!」

そう言うとレツはギュッとゴウを抱き締めた。

「…兄さん」

レツがゴウを見上げる。

「…?」

ゴウの表情がピクリと動く。

「…兄さんは僕のことが好き?」

その言葉にゴウがコクンと頷く。

「…犯したいくらいに?」

レツの目がキラリと光った。

「…はぁ…、…はぁ…!」

その言葉にゴウの体に異変が起こった。
突然、顔が上気し、息を荒くし始めたのである。

「…あれ?」

レツが足元を見て思わず声をあげた。
そしてニヤニヤしながらゴウを見上げた。

「いやらしいなぁ、兄さんは。僕のことを考えていたらこんなに大きくなって…」

先ほどの比ではなかった。
ゴウの股間がさっきよりも膨れ上がり、スーツの中で真っ直ぐに上を向いていたのである。

「…レツ…!…レツ…!」

ゴウの体がもがき始め、鎖を解こうとする。

「フフ。兄さん、慌てないでよ!」

レツはそう言うと、ゴウの唇にもう一度口付けた。

「…!」

ゴウがカッと目を見開き、体の動きを止める。
やがてレツの顔がゆっくりと離れてゆく。
お互いの口元が淫猥な唾液の糸で繋がる。

「これからたぁっぷり気持ち良くしてあげるから」

レツはそう言うとゆっくりと腕を動かし、ゴウの体を撫で始める。

「まずは兄さんを気持ち良くしてあげる」

そう言うレツの指がゴウの胸を捉える。

「…んッ!!」

ゴウの胸のある一点を通過するたび、ゴウが体をピクリと反応させる。

「あはっ!やっぱり兄さん、ここ感じちゃうんだね?」

レツの青いグローブが、ゴウの胸の突起をクリクリと弄る。

「んッ!!んんッ!!…んはッ!!」

ゴウが顔を赤らめ、目を閉じ、時折喘ぐ。
そのたびに、ゴウの口から淫猥な唾が飛ぶ。

「気持ち良い、兄さん?」

「…んッ!!」

ゴウは返事をする代わりに体をピクピクと跳ねらせる。

「フフッ!これだけで感じちゃうなんて…」

レツの顔がゴウの耳元へ近付く。

「…弟に犯されてよがるなんて、…変態だね、…兄さん…!」

その時、レツは真っ赤な舌を出したかと思うと、ゴウの耳を妖しく舐め上げた。

「はぁッ!!」

今まで感じたことのない刺激に思わず声をあげ、目を見開き、体を仰け反らせるゴウ。

「フフッ!」

レツはニヤリと笑うと、

「さぁ、もっと気持ち良くしてあげるよ、兄さん。そして最後は最高の夢を見せてあげる」

と言った。

「…"本物"のレツでね」


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