僕だけのヒーロー 第37話


今日は日曜日。
皆さん、営業も一休みで思い思いの行動を取っています。
ユウリさんはやっぱり女性。
朝からおしゃれをして買い物に出かけています。
アヤセさんは何も言わずに出かけました。
ドモンさんは。

「シオン様、どこか出かけませんか?」

とすっかり僕のヒーロー状態。
僕の目の前で片膝をついて座り、じっと僕を見上げています。

「…いえ、僕は…」

「…そっか…」

僕の曇った表情を見たドモンさんが呟きました。
そしてスクッと立ち上がると僕の頭をポンポンと叩きました。

「あんまり思い詰めるなよ?」

そう言うとドモンさんは僕をギュッと抱き締めました。

「大丈夫だよ、シオン。…何とか、なるから…」

「え?」

僕はドモンさんの言っていることが分からず、きょとんとしてドモンさんを見上げました。
するとドモンさんはニコッと微笑み、何も言わずに僕の部屋を出ていきました。

「…ドモンさん…」

ドモンさんの寂しそうな笑顔が妙に引っかかりました。
きっとドモンさんは気付いていたんでしょう。
実はこのところ、僕は元気がありません。
ドモンさんから聞かされた衝撃の事実。
竜也さんが。
竜也さんが僕を好きだったと言うこと。
それなのに、それを知らなかった僕は、竜也さんを振り向かせたくて、竜也さんを犯してしまいました。
そして。
僕を好きだって告白してくれたドモンさんと…。
改めて僕は部屋をぐるりと見回しました。
この間。
僕はこの部屋でドモンさんとエッチをしてしまったんです。
ドモンさんは僕のことを本当に心配してくれて、僕のヒーローになるなんて宣誓して。
今では公私共に凄く僕を助けてくれます。

「…でも…」

でも。
本当を言えば僕は竜也さんのことが大好きで。
でも竜也さんは僕のことが好きなはずなのに、何のリアクションも見せてくれません。
ドモンさんは、

「竜也を信じろ」

と言ってくれます。
でも。

「…本当に、…信じて…いいんですか…?」

疑いたくないけど疑ってしまいます。

「…僕…」

いつの間にか僕の目には涙が溢れていました。

「…竜也さん…。…僕ぅ、どうしたらいいのか、分からないです…」

そう言えば。
その竜也さんを朝から見ていません。
どこへ行ったんでしょう…。
その時でした。

ピンポーン!

僕の部屋のチャイムが鳴りました。

「…まさか…」

僕の足は無意識に速くなり、急いで入口まで走りました。
そして扉を思い切り開けたのです。

「うわっ!!ビックリしたぁっ!!」

そこにいたのは、紛れもなく竜也さんでした。

「部屋にいなかったらどうしようかって思ったよ。…どうしたの?」

竜也さんは中に入ると、僕の顔を見て言いました。
僕の顔は涙でぐしゃぐしゃでした。

「…オレのせい?」

竜也さんはそう言うと僕を優しく抱き締めました。

「オレが、いつまでもしっかりしないから?」

「…ッ!」

僕は何も言えずにいました。

「取り敢えず、話をさせてくれない?」

竜也さんはそう言うと僕の目をじっと見つめました。

「…どうぞ…」

僕と竜也さんは奥の部屋へ行き、ベッドに腰掛けました。
最初、ここで僕は竜也さんを犯しました。
竜也さんのアソコを責めまくって、何度も寸止めして。

「ねぇ、シオン」

竜也さんが僕を呼びました。
でも、僕は俯いたまま竜也さんの話を聞いています。

「…辛い思いをさせてごめん」

竜也さんがポツリと言いました。

「ドモンから聞いたかもしれないけど、オレ、最初からシオンが好きなんだ。シオンと初めて出会った時からずっと。でもオレ、情けないよね?自分で好きだって言えないんだもん。だからこんな最悪なコクリ方になっちゃったんだ」

そう言うと竜也さんは僕をギュッと抱き締めました。

「…今更なんだけど。好きなんだ、シオン」

「…僕は…」

嬉しいのに素直になれない自分に凄く嫌悪感を抱きました。

「…僕は、…最初から竜也さんの口からその言葉を聞きたかったです。今でもホントに好きです。ドモンさんも好きだけど、竜也さんの方がもっと好きなんです!」

「…シオン…」

竜也さんが僕と向かい合いました。

「辛い思いをさせて本当にごめん。…だから改めて言わせてくれるかな?」

そう言うと竜也さんは片膝をついて僕の前にしゃがみ込みました。

「シオン様が大好きです。改めて、シオン様のヒーローになることを誓います!」

次の瞬間、僕は竜也さんの胸に飛び込みました。

「うわあああっっっ!」

バランスを崩した竜也さんが後ろへひっくり返ります。

「…竜也…さん…」

僕の目からは後から後から涙が溢れてきます。
しゃくり上げる僕を竜也さんはギュッと抱き締めてくれていました。


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