課外授業 第35話


「…チッ、…チィ…兄ィ…?」

柔らかなベッドの上。
マジレッドにコスプレした弟の魁がオレの下にいる。
子犬のように怯えた表情をし、きょときょとと瞳が忙しなく動く。
だが魁の下半身。
2本の足の付け根に息づく、魁の男の子としての象徴である情熱は大きく屹立し、スーツの中で臍に向かって真っ直ぐに伸びていた。

「…さぁ、今度は魁をたぁっぷり気持ち良くしてあげないとな」

マジイエローにコスプレしたオレは魁の上に伸し掛かり、静かに魁の頭を撫でた。

「…ッ!?」

魁がビクリと体を震わせる。
そして目をギュッと閉じた。

「あまりかわいいことするなよ。制御が利かなくなる…」

オレはそう言うと、魁にそっと口付けた。
だが今度のキスはいつものような荒々しいものじゃない。
ちょいちょいと魁の唇を啄ばむ優しいキス。

「…チィ兄ィ?」

少し落ち着いたのか、魁がきょとんとした表情を見せる。

「魁、1つだけ聞いていいか?」

「?」

魁は相変わらずきょとんとした表情でオレを見つめている。

「…お前、オレのことが好きか?」

「!」

今日の魁はコロコロと表情が変わる。
瞬時に顔が真っ赤になった。

「…チ、…チィ兄ィはどうなんだよッ!?…オレのこと、虐めまくって、何が楽しいんだよッ!?」

「あ〜あ〜、逆ギレするかな、そこで?」

オレはそう言うと魁の背中に両腕を回し、そしてギュッと抱き締めた。

「…チィ兄ィ…?」

魁はどうしていいのか分からず、ただオレにされるがままになっている。

「…オレが魁を虐めるのはどうしてだと思う?」

多分、物凄く優しい表情をしていたんだと思う。
気が付けば麗ネェがデジカメを構え、ズームにしてオレの表情を撮っているのが分かった。

「…わ、分かんねぇよッ、そんなのッ!!」

相変わらずぶっきらぼうに言う魁。
そんな魁を抱き締めるオレの腕に更に力が入った。
そしてオレは魁の耳元に口を寄せた。

「…魁が…、…好きだからだよ…」

そう言ってオレは魁の耳にそっと口付けた。

「…あ…ッ…!」

魁の体がピクリと跳ねる。

「…お前は、オレのたった一人の弟だ。…小せぇ頃からオレにベッタリだった、すげぇかわいい弟だ…。…だから虐めたくなっちまうんだよ…」

そう言うとオレは魁の表情を見ようと体を起き上がらせた。

「…」

魁はオレの顔をまじまじと見つめたまま、微動だにしない。

「…魁が好きだ…」

オレがもう一度言った時だった。
急に魁が起き上がったかと思うと、オレに抱きついてきたのだ。
咄嗟のことにオレはグッと踏ん張り、魁の体を受け止めた。

「…魁…?」

今度はオレが逆に聞き返す番だった。

「…いよ…」

「ん?」

「酷いよッ、チィ兄ィッ!!」

オレに抱き付いたままで魁は叫んだ。

「オレだって、チィ兄ィが大好きなんだ!チィ姉ェも、芳香姉ちゃんも、蒔人兄ちゃんも大好きだけど、チィ兄ィは一番年も近いから大好きなんだ!チィ兄ィに最初に犯された時、ホントはスッゲェ気持ち良かったんだ!でもそんなこと言ったらきっとチィ兄ィに嫌われるって、そう思ってたんだ!それにチィ兄ィもいつもの悪ふざけの延長かなって思ったんだ!チィ兄ィッ!!チィ兄ィッ!!」

最後は泣き叫んでいた。
魁のクリクリとした瞳から流れ出る沢山の涙。
ボロボロと子供のように泣く魁。
その全てがいとおしかった。
オレは魁を向き合わせる。

「…ッく…ッ…、…ふ…ん…ッ…!!」

しゃくり上げる魁。

「…ごめんな、魁…」

オレはそう言うと魁の唇に再びキスをした。
今度はさっきのような優しいキスじゃない。
ゆっくりと魁の唇を蹂躙し、そのまま舌を魁の口の中へ捩じ込ませる。

「…ん…、…ふ…ん…ッ…!!」

魁がそれに応えようと必死に舌を絡めてくる。

…キュッ…、…グチュ…ッ…!!

オレの舌と魁の舌とが絡み合い、淫猥な音を奏でる。
やがてオレ達は唇を離し、お互いに向かい合った。

「…魁…」

オレがニッコリ微笑んでやると、

「…チィ…兄ィ…!」

と魁がはにかんだ笑顔でオレを見る。

「…さぁ、さっきの続きだ…」

オレがそう言ったその時だった。

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッッ!!!!」

突然、泣き声が聞こえたかと思うと、ドスンという鈍い音がしてベッドの上に麗ネェが座り込んだ。

「うわああああっっっ!!!!」

オレ達はびっくりして飛び退く。

「…えぐ…、…ひっく…。…ふええええ…」

「…ど、どうしたんだよ、麗ネェ?」

顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして、女とは思えない顔で麗ネェが泣いている。
ひくひくと肩を波打たせ、ペタンと座り込む麗ネェ。
良く見ると、麗ネェもいつの間にかコスプレをし、マジブルーとなっていた。

「…アタシ…、…アタシィィッッ!…アンタ達2人を見てて感動しちゃったのォッ!」

「…なんで?」

魁が麗ネェをポカンと見つめている。

「アンタ達、最高の兄弟だわ!禁断の兄弟愛が現実で見られるなんて…ッ!!」

「そっちかいッ!!」

思わず同時に突っ込むオレと魁。
だがその時、オレと魁は顔を見合わせるとお互いに笑った。

「何よォッ!!」

顔を膨らませる麗ネェ。

「はいはいはい」

オレはそう言うと麗ネェを抱きかかえた。

「これから魁と愛し合うんだから、麗ネェはちゃんと撮影しててくれよな!」

「…分かったわよぅ…!」

麗ネェは渋々部屋の隅の方へ歩いていった。

「…さて…」

オレはゆっくりとベッドに座り直した。

「チィ兄ィ」

オレのすぐ横に魁がやってきた。
その表情はやや照れ臭そうに、それでも嬉しそうにニコニコとしている。
オレは魁の肩に腕を回した。

「…好きだぞ、魁…」

「…チィ兄ィ、オレも…」

オレ達は再び唇を合わせた。
そしてそのままベッドへ倒れ込んだ。


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