課外授業 第31話


壁掛け時計が6時の時報を告げた。

(そろそろ帰ってくるかな…)

夕食の準備をしながら、オレは弟の帰りを待っていた。
オレは19歳、そして弟の魁は17歳の高校生。
熱血サッカー小僧である弟は部活で遅くなると言っていた。

(…無事に帰ってこられるかな…)

正直言うと少し遅い魁の帰りを心配していた。
いつもなら6時前には帰ってくるのに。
冬の空は暗くなるのが早い。

 

おっと。
ここで説明をしておかないといけないな。
今、オレと魁は我儘な麗ネェの要求に応えようとしている。
麗ネェの大好きな「ボーイズ・ラブ=やおい」の作品をそのまま再現してやることになったのだ。
もとはといえば、オレが魁を犯しているところを麗ネェに見られてしまったからなのだが。
しかもその作品のキャラクターにはちゃんと名前があるというのに、麗ネェは実名で呼び合えと要求してきた。
だから演技の上でもオレは「翼」として、そして魁は「魁」として演じるので、そこんとこヨロシク。

 

オレはベランダに行くと窓を少しだけ開けた。
吐く息が白い。
空には宵の明星や冬の星座がキラキラと輝いている。

(…いたいた!)

家の前の道をバタバタと物凄い勢いで走ってくる男の子を見つけた。
魁だ。
オレはゆっくりと台所に戻った。
そしてコンロに掛けてある鍋の中をゆっくりと掻き混ぜ始めた。
と同時にバタンという大きな音がし、

「たっだいまぁッ!!」

という元気な声が響いた。

「お帰り、魁!」

オレは玄関先で弟を出迎えた。
学生服姿の魁。
17歳なのにあどけない幼顔。
満面の笑みを浮かべている。

「チィ兄ィッ!」

そう言うと魁はオレに抱き付いてきた。
オレは今日は出かけたついでもあって、皮パンと皮ジャン姿。

「チィ兄ィぃ、今日も疲れたよぉ」

そう言うと魁はオレの背中に両腕をギュッと巻き付けた。
魁の温もりがオレの体に伝わってくる。

「今日はいつもより帰りが遅かったんだな。ちょっと心配したぜ?」

「…ごめん。もうすぐ試合だから、その練習に熱が入っちゃってさ」

目をキラキラと輝かせる魁。
オレはクシャクシャと魁の頭を撫でた。

「飯、食えるか?」

「うん!僕、もうお腹ぺっこぺこ!」

そう言うと魁は目をゆっくりと閉じた。
お決まりの合図だ。

「…ったくぅ…」

オレはそう言うと静かに魁の唇にキスをした。
魁の柔らかい唇がオレの唇と重なる。

「…チィ兄ィ…」

魁がオレの胸の中に顔を埋める。

「おいおい。飯、遅くなるぞ?」

「うん!」

魁はそう言うとダイニングに行き、腰掛けた。

 

「美味しいッ!!」

寒くなってきたので今日の夕飯はシチューにした。
オレの得意料理の1つだ。

「チィ兄ィのシチューは凄く美味しいんだよねぇ!」

「まぁ、オレの得意料理だからな♪」

美味しい美味しいと何杯もお代わりをする魁。
その表情を見ると本当に気分が良い。
というか、嬉しい気分になる。

「ご馳走様ぁっ!!」

魁が椅子に思い切りふんぞり返った。

「お腹いっぱいだよぉ…」

オレはフッと微笑むと、ゆっくりとコーヒーを口の中に入れた。

 

「…チィ…兄ィ…」

暫くすると、魁がオレを呼んだ。

「?どした、魁ぃ?」

「…エヘヘヘ…」

扉の陰から出てきた魁を見た瞬間、オレの心はドクンと早鐘を打った。

「マ〜ジ・マジ・マジ〜ロ!!」

魁が何やら不思議な呪文を唱えた。
その瞬間、魁の体が光り、真っ赤な光沢のあるスーツに着替えていたのだ。
これが魁の趣味。
ヒーローへのコスプレ。
しかも魁は燃える赤が大好きなのだ。
そのスーツが魁の体をピッタリと包み込んでいる。
密着性の強いスーツなので、魁の肉付きがはっきりと分かる。
そこそこ鍛えているであろう腕、足は多少の筋肉が付き、お腹にはうっすらと腹筋が見える。
そして。
オレの下半身がドクンと疼いた。
ちょっと顔を赤らめている魁。
その下半身の中心。
男の子としての象徴がふっくらと形を成している。
魁の情熱が勃起していたのだ。

「…魁?」

オレはゆっくりと立ち上がる。
と同時に魁がオレに抱き付いてきた。

「どした、魁ぃ?」

オレは分かっていながら、ゆっくりと魁の頭を撫で続ける。
オレの下半身の情熱も熱を帯び、ズボンの中で大きく屹立していた。

「…い…て…」

「ん?」

「…僕を、…今夜も…、…抱いて…。…チィ兄ィも、コスプレしてよ…」

魁と目が合った。
目を潤ませ、顔を真っ赤にしている魁。

「…いやらしいな、魁は…」

オレは優しい眼差しでそう言うと、魁は顔を更に真っ赤にさせた。

「いくぞ!マ〜ジ・マジ・マジ〜ロ!!」

オレも呪文を唱えた。
すると魁と同じように体が輝き、オレは雷の黄色のスーツを身に纏っていた。

「…ッ!!」

魁が息を飲んだのが分かった。
そりゃ、そうだろう。
オレのスーツも魁と同じように密着性があり、肉付きをクッキリと現している。
そして。
魁と同じように、オレの股間の情熱もスーツの中で、臍に向かって真っ直ぐに伸びていたのだ。
しかも形がクッキリと分かるように。

「今夜はどうやっていじめてあげようかな?」

オレは魁にそっとキスをする。

「…ん…、…ふ…」

オレは舌で魁の口を強引に抉じ開ける。

…クチュ…、…チュ…ッ…!!

オレと魁の口が絡み合う音が部屋中に響く。

「…ベッドに、…行こうか…」

オレの顔もほんのり赤みを帯びている。

「…うん…」

魁は小さく頷いた。
そんな魁をお姫様だっこするオレ。
そしてベッドに向かってゆっくりと歩き始めた。
魁は何も言わず、オレの首に腕を回し、胸の中で目を閉じていた。


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