課外授業 第20話
「…く…っ…そぉ…ッ!!」
更に数日が流れた。
魁は一人魔法部屋にいた。
2人の兄と2人の姉は共に出かけている。
今の魁はいつもの魁とは様子が違っていた。
イライラしていた。
部屋を何度も行ったり来たりしている。
拳をブルブルと震わせ、顔は苛立ちと怒りで震えていた。
「みんなしていつまでも俺を子供扱いしやがってぇ…ッ!!」
そう言うと魁は壁を思い切り殴り付けた。
ドゴッ!!
「…っ痛ぇッ!!」
壁にぶつけた右手を左手で抱え込み、慌ててその場に蹲る。
「今日だってそうだ。みんなで買い物に行くって言うのに、俺は足手まといになるからって留守番させられて…!!…特にッ!!」
そう言うと魁は立ち上がった。
「チィ兄が一番許せないッ!!俺を『ガキ』だの『お子様』だのと連発して。俺はいつまでも子供じゃねぇッ!!」
その時だった。
「…ッ!!」
魁の目がカッと見開かれ、その場に崩れ落ちた。
「…うああッ!!」
魁の両手が股間に伸びている。
「…はぁ…、…はぁ…ッ…!!」
魁の股間。
男の子としての象徴であるそれが大きく勃起し、魁のジーンズを押し上げていた。
「…チィ…兄ィ…ッ!!」
ここ数日間、魁は毎日のように兄である翼に犯されていた。
わざと魔法変身させられ、そのスーツの上から股間を弄られ、為す術もないまま情熱の涙を噴き出していた。
そして今ではその刺激が待ち遠しくて堪らないほど、魁の中で翼の愛撫はなくてはならないものになっていた。
「…チィ兄のせいで…!!」
翼のせいで快楽漬けになってしまった魁。
そんな自分に嫌悪を覚える自分、だがあろうことかそれを期待している自分とがいる。
そんな両極面に魁は苛まれていた。
「…何とかして…」
ブルブル震える手でテーブルにしがみ付き、立ち上がろうとする魁。
しかしそのたびに魁の股間のそれがジーンズと擦れる。
「ああっ!!」
体に凄まじい電流が流れる。
へなへなと崩れ落ちる魁。
「…許せねぇ…!!」
歯を食い縛って立ち上がろうとする魁。
「…チィ兄ィも…、…同じ目に遭わせてやる…ッ!!…いやッ!!」
股間の快感を懸命に堪えながら、何とかテーブルに捕まり立ちする魁。
「…俺以上に、…辱めなきゃ、…気が済まねぇッ!!…チィ兄ィを…、…ボロボロにしてやる…んだぁッ!!」
その時、テーブルの上から何かが落ちた。
「…これは…?」
ゆっくりとそれを拾う魁。
「芳香姉ちゃんの、…マージフォン…?」
次の瞬間、おぞましい考えが魁の頭の中を駆け巡った。
「…フフッ…!!」
魁の瞳がギラギラと輝き、その口元は妖しいほどの笑みが浮かんでいた。
「…ただいまぁ…」
それからどのくらい経っただろう。
疲れた表情で翼が帰ってきた。
「お帰り、チィ兄ィ」
ニコニコと翼を出迎える魁。
「…おう…」
魁の表情に一瞬戸惑いを覚えた翼だが、そんなに気にも留める様子もなく、魁の頭をポンと叩くと部屋の奥へと入っていく。
「みんなは?」
「当分帰ってこねぇ」
「え?」
魁がきょとんとした表情で尋ねる。
「兄貴は農場。姉貴達は買い物に夢中。ったく、姉貴達の買い物にいちいち付き合ってられっかっつーの!」
「当分って?」
「さぁな。でもまぁ、夕方くらいまでは帰ってこねぇだろうな」
「…ラァッキ♪」
魁がニヤリとして呟いた。
「あん?」
翼が訝る。
「…い、いや、別に。あ、お茶でも淹れるよ」
そう言って魁は台所へと向かった。
今は一刻も早く翼の元を離れたかったからだ。
股間がおぞましい感情を表していたからだ。
台所に来た魁は翼の湯呑みを取り出した。
「…チィ…兄ィ…」
魁の心臓はドキドキと早鐘を打っていた。
手には小瓶を持っている。
中には透明な液体が入れられている。
静かに翼の湯呑みにお茶を淹れる魁。
そして。
小瓶の中の液体を数滴垂らした。
「お待たせ、チィ兄ィ」
そう言うと湯呑みを差し出す魁。
「おッ、気が利くじゃねぇか、魁ィ」
何の疑いも持たずに湯呑みを取る翼。
そして中のお茶を一気に飲み干した。
「…ッ!?」
異変はすぐに起こった。
「…か…い…?」
翼の目がカッと見開かれ、信じられないという表情で魁を見ている。
魁は倒れゆく兄を無表情に、冷たい眼差しで見ていた。
「…て…め…え…!!」
翼は魁に掴み掛かろうと詰め寄ろうとした。
しかしその前に無様に崩れ落ちた。
「…や…った…!!」
足元には翼が倒れている。
それを見て魁は息を大きくしていた。
大きくしていたのは息だけではなかった。
魁の股間の中心。
それが今まで以上に大きくなっていた。
「チィ兄ィが、チィ姉ェのために睡眠誘導剤を作っていたことぐらい、俺だって知ってたんだ!!」
このところ、魁と翼の姉である麗があまり眠れないと言っていた。
そんな麗のために翼が睡眠誘導剤を作っていたことを、魁はちゃんと覚えていた。
「…まずは…」
そう言うと魁はマージフォンを構えた。
「テーブルよッ!!チィ兄ィを縛る磔台になれッ!!…ジルマ・マジーロッ!!」
そう唱えた瞬間、音を立ててテーブルが動き、巨大な平たい台になった。
そして翼の体がふわりと浮き、その上に乗せられた。
次に台からつるのようなものが伸びてきて、翼の両腕を頭上へ、そして両足は大股開きをして縛り付けた。
翼はX字に磔状態にされている。
そんなことをされても一向に目覚める気配がない。
「…次は…」
魁はそう言うとツカツカと翼のもとへ歩み寄った。
そして翼の手を握った。
「マージ・マジ・マジーロッ!!」
魁がそう呪文を唱える。
すると2人の体が光り、魁はマジレッドに、そして翼はマジイエローに魔法変身していた。
「…あとは…」
魁はそう言うと、今度は姉の芳香のマージフォンを取り出した。
「変わりま〜す!マージ・マジーロッ!!」
「…う…ん…」
うっすらと目を開ける。
天井のライトの光が目に飛び込んできた。
その眩しさに一瞬だけ目を細めた。
「…オレ、…寝転んでるのか?」
オレはぼんやりとする頭でぼぉっと周りを見てみる。
やけに手足が痛い。
そして意識がはっきりしてきた時、オレはあまりの光景に声をあげた。
「…なッ、…何だよッ、これッ!!」
両手両足が大きく開かれ、縛り付けられている。
「…これは、…テーブルぅっ!?」
テーブルの中からつるのような物が伸びていて、オレのそれを縛り付けていた。
「…なッ、何でだよッ!?」
更に驚いたのは、オレは唱えてもいないのに魔法変身していたことだった。
そして。
「あ、気が付いた、翼ちゃん?」
その声の主に言葉を失い、顔は真っ青になった。
「…ほ、芳ネェッ!!」